私達は時々、はりつめた緊張というものを経験する。状況がシリアスであるためにのしかかる重い空気が私達をしめつける。
その時、ワシントンでもたれていた会議でも、テーブルを取り囲んでいる閣僚達は重圧によってつぶされそうな部屋の中で、誰一人口を開こうとはせず、一人の男の口から語られる言葉を固唾を飲みながら待っていた。
閣僚が見つめる中、ついにその男は立ち上がり、あるユーモア作家の本を広げ、適当にページを開き声を大にして読み初めた。この男がまじめに大きな声で朗読を続けるものだから、そこにいた閣僚達はあっけにとらわれて言葉を失い、やがてその沈黙はとげとげしい眼差しに変わった。
その男はその本の一節の朗読を終えると閣僚達に向かい言った。「君達はなんで笑わないのか。こうでもしなかったら、私は日夜の激務に耐え切れずに死んでしまうだろう」。そういいながら、隣にいる国務長官から「例の書類」と呼ばれているものを受け取った。この男、アメリカ合衆国15代大統領、エイブラハム・リンカーンはその書類、奴隷解放宣言を今度は読み始めた・・・。
迫害の歴史と共に歩んだユダヤ人達が笑いを大切にしたことは、あまりにも有名だ。ジーザスの言葉の中にもそんな笑いを感じ取ることができる。笑いは神が人間に与えたもうたギフトだと思う。
マック
追伸:「もし君がときに落胆することがあったら、この男のことを考えてごらん。小学校を中退した。田舎の雑貨屋を営んだ。破産した。借金を返すのに十五年かかった。妻をめとった。不幸な結婚だった。下院に立候補。二回落選。上院に立候補。二回落選。歴史に残る演説をぶったが聴衆は無関心。新聞には毎日たたかれ国の半分からは嫌われた。 こんな有様にもかかわらず、想像してほしい世界中いたるところのどんなに多くの人々がこの不器用な、ぶさいくな、むっつり者に啓発されたことかを。その男は自分の名前をいとも簡単にサインしていた。A・リンカーンと」 ユナイテッド・テクノロジー社編 『アメリカの心』 岡田芳郎・楓セビル・田中洋訳、学生社刊)

彼は失敗する度に笑ったにちがいない。そして、その笑いは伝染したに違いない。